フィスぺリ Suone Visperi [アルプスの旅2024]
7月7日 Suone Visperi
フィスプの裏山(南側)にある灌漑用水路の道を歩いてきました。
朝起きると雨でガスってました。
直ぐ近くのポストミュージアム(郵便博物館)、広場の石畳の歩道は雨に濡れていました。
翌日はシャモニーへ移動しますので、この日がフィスプで行動できる最後の日です。アレッチ氷河を西側から眺めるハイキングコースに行こうかとも思いましたが、雨上がりも午前の遅い時間帯で、天候の回復も不確かだし時間もかかるので見送り。フィスプからブリッグに沿った山域を歩くフィスペリという用水路の道をあるくことにしました。
フィスプ市街を南東に10分ほど歩くと遊歩道への入口があります。いきなり急登が続きます。樹間からはフィスプの街が見えます。
心地よい水の音色が聞こえてきました。ここが Visperi Suonen 「フィスプの用水路」です。
南へ向かうとヴィスパーターミネン・・4~5時間はかかりそう。東へ向かうとアイホルツ、ガムゼンへ、Visperi Suonen はこちらです。さらにそこから先はギビデウム峠・・下りのコースタイムが5時間なので、たぶん8時間くらいはかかるでしょう。
用水路沿いの遊歩道を東に進みます。上流に遡って歩いていきますが、平坦で流れも比較的緩やかです。ドイツ語圏ではSuoneスオーネ、フランス語圏ではBisseビッセと呼ばれています。灌漑用水路で山間部の水を牧草地、ワイン畑、果樹園に運ぶ用水路で、山の斜面や崖沿いにつくられました。ヴァレー州には600程のビッセがあるようです。
写真のように、のどかな感じの遊歩道が続くと思っていました・・・
だんだん山側が岩々しい壁が出てきて、道も細くなってきました。
谷側が切れて手摺も出てきました。
オーバーハングになった崖に鉄パイプの手摺が設置されています。谷側には草の下はスパッと切れて、スリリングです。
山側崩落部分あり、落石注意の掲示板あり。ここは足早に通り抜けます。土砂が崩落したら水路は埋まってしまうので保守巡回はされているのでしょう。
ビッセは中世から近世の間に造られた歴史的な土木遺産です。水資源の豊富な山岳地帯から谷へ自然の地形に沿って造られた用水路で、牧草地、農園、ワイン畑、果樹園へ水が運ばれます。用水保守点検のための狭い作業道も併設。いくつかのビッセが今日まで保守メンテされ、ハイキングコースとして残っていることは素晴らしいと思います。スイスにはビッセハイカー・ビッセハンターも少なくないようです。
ずっと手摺が付いた区間が続き、気が抜けません。手摺の位置(高さ)は腰の位置です。
ちょっと足場が広くなったところで見返すと崖です。樹木や草で覆われているかもしれませんが、写真で見る感じよりもずっと恐怖感あります。山側の崖がオーバーハングになって上半身を谷側に傾けるので、切れた細い道が更に狭く脚の置き所には気をつかいます。ギムゼンやアイホルツから下って来るハイカーの方が多いようです、すれ違い時はお互い道の広いところで待ちます。
手摺はないものも、狭い道。谷側は草だと思って脚を載せるとズボッと下へいってしまします。怖)
ローヌ谷の風景が開けますが、足もとも開けています(怖)。。。アイホルツの街、その先はブリーク。
山側はオーバーハングの崖、谷側は切れ込んだ断崖の連続。スリル満点です。
崖に積み上げられた道。その内側に用水路を造ってある。建設機械やクレーンがない時代にどうやって造ったんでしょう。足場をどう組んだんでしょうか?
地形を生かして安定的に緩やかに目的地まで運ぶ用水路の設計と建設は、高いエンジニアリングと相当の困難があったのではないかと察せられます。ポンプといった補助動力も使わず高いところから低い処へ流れるという自然の摂理に基づき、トンネルや運河、崖沿いにオーバーハングの足場の上に人口の用水路を設けた。スイスの山岳土木エンジニアリングの高さとスイス人の精緻な気質を感じます。
用水路沿いに咲く花。
山側も崖から斜面、谷側も崖からなだらかなスロープになると、アイホルツの街が近づきます。
風景が開けた牧草地があったので、ここでランチ休憩しました。徐々に雲がとれてきましたが、スッキリとはせず。思い描いた楽々ハイクではありませんでしたが、登山魂を少しかき立てるハイキングでした。
もう少し歩こうかとも思いましたが、このハイキングコースの「核心部」はフィスプ~アイホルツ区間なので、アイホルツに下ることにしました。
このあたりは酪農とぶどう栽培(ワイン)です。
これは白ブドウでしょうか。ローヌ産のワインもおいしいでしょうね。
果樹園の間を抜けてアイホルツの駅へ向かいます。
アイホルツから見たハイキングコース。山の中腹をトラバース、用水路は右(西)へ緩やかに下ってフィスプにむかいます。山麓から街中の舗装路は照りつける日差しで暑いです。
今回辿ったGPSのログをGoogle Earthにダウンロード(右がフィスプ、左がアイホルツ)
アイホルツのMGB(マッターホルンゴッタルド鉄道)駅。
無人駅で切符売り場もありませんでした。プラットホームにインターホンがあり、切符売り場はどこかと聞いてみたら無いようで、フィスプ駅ホームで検札の車掌が待ってますのでそのまま乗車してくださいとのこと。念のため日本人2名のカップルですと申告しておきました。駅のホームでは車掌さんのガイドで自動券売機で切符を購入。車掌さんからあなた方はとても正直で良い方ですと云われました。当然のことですが、無賃乗車もあるようです。前々回の記事のように、バスでオンラインチケットを提示できずトラブった海外客がいましたが、スイスやドイツでの無賃乗車はとても高額なペナルティーを科せられます。スイスを含む欧州では駅に改札口もありませんが、車内よりも事前に駅で購入しておいた方が賢明です。昨年の旅行でも観光地の路線では、不正乗車(切符不備、異なるクラスへの乗車)で車掌さんに注意される海外客が目立ちました。なんら悪びれる様子も見られませんでした。・・・余談になりますが・・
地球温暖化でここ数年スイスでも夏の到来が早まる傾向でしたが、今年は大雨で洪水や崩落で交通機関が分断され、山も残雪が多く登山道は閉鎖、山岳交通手段も予定通り開始せず。私たちの予定した登山・ハイキングも番狂わせとなりました。フィスプでの8泊、天気が2日間のみであとは曇りがちの天気が多かったです。それでも天気予報を参照しながら、個人旅行ならではの臨機応変で、毎日どこかへはハイキングや散策に出かけることが出来ました。国内外を問わず地球温暖化による異常気象は、今までになかったような大きな影響・被害を及ぼし、それが恒常化しつつあり。本当に困ったことですね。
*注:フィスプ~ツェルマット区間の列車運行はようやく再開されたようです。復旧には2か月もかかりました。
翌日は列車で国境を越えてフランス・シャモニーへ移動します。
灌漑用水路はビッセというのですね。
山肌を削って自然の傾斜で流れるように作られているのですね。
中世というと17世紀でしょうか、機械もなかった時代に土木技術の高さが分かります。
谷側は絶壁の細い道は手摺が無いと恐怖ですね。
谷側が絶壁の細い道は下の廊下を思い出してしまいました^^;
牧草地でのランチは眺めも良く気持ちよさそうです。
フィスプで8泊もされたのですね。
毎日色んなところを歩けて良かったですね。
by tochimochi (2024-08-31 20:59)
用水路沿いの遊歩道、細く、片側は崖だったり、鉄パイプの手摺もあってスリリングでしたね。
用水路は中世から近世の間に造られた歴史的な土木遺産とのことですが、ローマ時代の水道と同様、重機のない時代にこういうものを建設する知恵や技術の高さを感じます。
ヨーロッパは確かに車内の検札が厳しいですね。何度か遭遇したことがあります。
by kuwachan (2024-09-01 11:55)
1枚目の画は中山道のどこかと錯覚しました。当然スイスの記事の続きなのでスガ・・・これだけOJJのボケが進行しています!
スイスの土木技術は相当進んでいるのでしょうね~雪崩も落石も越えてきたのでしょうから・・
by OJJ (2024-09-01 13:29)
自然の美しさが、続きますね!
地元の人にとっては、見慣れた風景なのでしょうが
私には、別世界です。
by ファルコ84 (2024-09-01 16:11)
今までとはちょっと違ったコースもあるんですね。
なだらかではるか遠くまで美しい山々が見渡せる
そんなコースとはまた違って、冒険心が湧くような道ですね。
by nousagi (2024-09-01 18:08)
灌漑用水路の道、流れる水音を聞きながら、ゆったりとのどかな散策が続くと思いきや、
写真を眺めつつ、お話を読み進めて、心臓がバクバクでした。なんてスリリングな・・・。
見返した崖の写真も怖かったです^^;。
by Inatimy (2024-09-01 18:22)
フィスペリにあるハイキングコースは、なかなか鋭いコースなんですね~。
さすが、ツアーでは行けない所ですが、スイスの知られざる素晴らしい紹介ですね~♪。相変わらず花もとても綺麗ですね~(^^♪。
by drumusuko (2024-09-02 12:10)
麓の街の風景は長閑なのに、緊張感みなぎる登山道との対比が^^;
アルプスのハイキングコースはこのイメージありませんでした。
by imarin (2024-09-02 16:31)
こんにちは^^
スリル満点な道、足がガクガクしそうです。
手摺がついていても私はとても歩けません^^
拝見するには、自然豊かなとても素敵な道ですね♪
可愛いお花に出会うと、ホッとしますね^^
by いろは (2024-09-02 16:36)
tochimochi さん、 機械や重機がなかった時代にどうやって造ったのか、本当に興味深いです。しかもなんら補助動力なして。上から下へ流れるという自然の原理だけですね。
手摺が付いていても怖いです。下の廊下は行ったことはありませんが、その類でしょうか。
欲張らずに毎日数時間でも歩ければと思っていましたので、その点ではよかったです。
kuwachan さん、 スイスはトンネルや山岳交通機関が至るところで発達していますが、こういった土木エンジニアリングが醸成されたのも、なんとなく頷けます。ロープウェイやゴンドラでも難所に鉄塔を組まなければならないし、ユングフラウ鉄道もしかりです。
欧州の検札、ご存じの通りです。ずるがしこい人たちがいます。
OJJさん、 トップの写真は日本でも一見見かけそうですが・・・ないです。(笑)
水にかんしては、OJJ様もプラントエンジニアと察します。土木技術は日本もすすんでいますが、山岳土木はスイスが先んじているかもしれませんね。
ファルコ84 さん、 山奥や高所でなくとも、楽しめるところが多いですね。私にとっても別世界です、日本に帰るとああ夢だったとさえ感じます。
by Jetstream (2024-09-02 22:54)
nousagi さん、 スイスにはこうした用水路の道が多くあります。もう少し西の山岳地帯に逝けば標高2千Mくらいでもビッセと呼ばれる道があります。一昨年もその一つ(残骸)を歩きました。アルプスの眺めが素晴らしいです。手摺の道は怖いです。(笑)
Inatimy さん、 崖がオーバーハングになっているので、体の上部は谷側に寄りますので怖いです。でも怖さとともに面白いハイクでもありました。水の流れる散策路は癒しですね。
drumusuko さん、 ショートコースですが、日本にはない水の散策路でした。素晴らしい有名な山岳リゾートもありますが、知られないですが楽しめるところは無尽蔵です。海外の方はほとんどが個人旅行、シニア方も多いです。スイスへの日本人観光客は激減(半減以上)しているようです。その原因はリピーターが少ないとの見方あります。余談でしたが。
imarin さん、 スイスの良いとことは登山、トレッキング、ハイキングから散策、観光巡りと多様な楽しみ方があると感じます。冬は大スキー場がいたるところ。このように水の散策路もあり。スイスのトレッキングコースをたした総延長は地球何周と云われます。
いろは さん、 怖いです。(笑) 水路沿いに咲く花の名前はわかりませんが、ほっとした気持ちになります。山麓にもいろんんが花々が見られました。ワイン畑のブドウ、秋になれば美味しいワインが出来るでしょう。
by Jetstream (2024-09-02 22:57)
こんなところで採れたブドウから作られたワイン、美味しいんだろうなぁ~(笑)!!
by トモミ (2024-09-03 13:17)
海外旅行は天気を選べませんね
個人旅行だからこそ、合間に楽しまれたでしょうが
ツアーだとそうは行きませんね、私たちがツアー旅行をした
15年前は、幸い天気に恵まれました
by koh925 (2024-09-05 15:22)
用水路のコースって普通のハイキングコースと違うんですね
私は高所恐怖症気味なのでとても怖くて歩けそうもないです。
by プー太の父 (2024-09-08 10:06)
1枚目の写真
こんな道を歩いていたら、さぞや気持ちの良いものでしょうね。
鉄道、そうですね
改札も何もないですものね。
by 八犬伝 (2024-09-09 12:54)
トモミ さん、 ヴァレー州は日当たりがよく熟成されたワインが美味しいですよ。
koh925 さん、 スイス旅行は天気が良くて幸いでしたね。ここ数年毎年お天気に恵まれましたが今年は良くなかったです。個人旅行だと行先が変更できるメリットがありますね。
プー太の父 さん、 私も高所は怖いです。幸い手摺があるのでなんとか歩けました。用水路の道はなだらかにつくられているので、その点は歩きやすいです。
by Jetstream (2024-09-09 21:44)