ガステルンタールはカンダーシュテーク南東奥にある山岳渓谷です。カンダーシュテークの街からは見えない秘境で、アクセスするには前日訪れたスンビュール山麓駅の横から巻いてクルーゼChluseと呼ばれる狭く深い渓谷、その右側の絶壁につくられた回廊を上がっていくしかないようです。(写真は前日ロープウェイ下りで撮ったショット)
幸いにもガステルンタールまでは駅前からマイクロバスが運行しています。現地のツーリストオフィスで前々日に確認したら、運行は6月~10月限定で定員乗車、往復とも電話予約が必要。オフィスで教えてもらった番号に即日電話して往復のバスを予約しておきました。
マイクロバスは駅前8:50発、定員座席数すべて満席でした。
バスは断崖の回廊を進み洞窟のようなトンネルを通ります。谷側に座らなかったので怖くはなかったです。
トンネルを抜けるとガステルンタールの入口、カンダー川にかかる橋を渡りクルーゼ渓谷を抜けます。
橋から1分ほどでホテルヴァルドハウスWaldhaus前バス停で下車。狭い渓谷を抜けたら別世界、広々とした渓谷が待っていました。
下車したのは我々二人のみ。ほとんどの方は終点のセルデSeldenまでいくようです。そこから絶景の峠レッチェンパスLoetschenpassやカンデルファーン大氷原Kanderfirmまで行かれる方や、ここクルーゼ渓谷まで下って来る方かもしれません。
我々はここから渓谷を流れるカンダー川沿いのトレイルをセルデまで歩く予定です。
9時5分過ぎにバス停からカンダー川を南に渡りました。右に駐車場がありマイカーでも来れるようです(通行料要ります)。
ホテルヴァルドハウス、ホテルと名が付いていますがバーグホテル(山のホテル)。バーグハウスも多いですが山宿、ヒュッテが日本の山小屋に相当すると思います。
軒下にはカウベルが吊り下げられ、バルコニーの花壇に花が飾られていました。ホテルというよりシャレーのような感じです。
ホテルの直ぐ横に牛舎があったので、兼業しているかもしれません。セルデまでのコースタイムは1:45、約2時間半とみます。ここからもゲンミパスへCTで4時間、バルムホルン小屋Balmhornhutteまで2時間、レェチェンパスまで5時間余となっています。このホテルをベースにトレッキングを楽しむ方もいるかもしれません。
カンダー川を左岸へ、せせらぎの音が心地よいです。
4人のパーティー、マイカーで駐車場から歩いて来たのでしょう。バルムホルンヒュッテへ向かったようです。
このあたりはガステレホルツGastereholzと呼ばれる牧草地。断崖に囲まれた広い草原は下界から遮断されたような空間です。すでに放牧されお牛様達は午前中からお休みのよう、のどかな風景です。
バルムホルンヒュッテへの三差路。大きな滝、名前は不詳。渓谷沿いにはこんな滝が幾筋もあります。バルムホルンヒュッテからはどんな展望が開けているんでしょう、見てみたいです。
見上げれば眩いような氷河とバルムホルン3,698M、バルム氷河から流れる滝。バルムホルンヒュッテは滝の上のテラス、左側に在るようです。
渓谷沿いの山々の氷河を源流とする白濁色のカンダー川支流、木造の橋
5段の滝、かなり標高差があります。更にその上には奇妙な形のツインピーク、山座は不詳ですがオーバータテリシュホーレと云われる山塊のようです。
2段目の滝をズームアップして撮ってみました。落差がありますね。
カンダー川を再び右岸へ、北側の道を上流に進みます。山にかこまれた森のなか、川沿いのトレイルを歩くのもいいですね、
川沿いの道はフラワーロードです。
エシネンゼーとの境をなすドルデンホルンDoldenhornの南麓。角のように尖った岩峰群が奇景です。
車道に合流しカンダー川を左岸(北側)にわたり、山道に入ります。
川沿いを高巻きする樹林帯の登山道を上ります。
このあたりにはアルプスの花が多く咲いていました。
Wine Rose という花に似ています。
カンダー川を見下ろしながらしばらく進みます。家が点在しています、牛舎や納屋でしょうか? 奥に見える高峰はホッケンホルン3,293M、稜線のコルはレッチェンパスのように見えます。
ドルデンホルンの南側岩峰群。山麓の家屋、ひと気は感じられません。以前は民家だったでしょうが、納屋や倉になっているのかな。バーグハウスの方の宿舎なのかな。
11時半にセルデに着きました。ほぼ予定通りで2時間25分かかりました。山岳ホテル(バーグハウス)、シュタインボックSteinbock。ここでドリンクを買って中庭で休憩。この宿の奥にセルデバス停乗り場があります。
その奥にもう1軒ガステルンタールという名前の山岳ホテルがありました。
ランチはハイムリッツHeimritzへの途中、景色が開けた川沿いの台地でとることにしました。
川沿いは崖となり、登山道は岩石帯のザレた道を高巻きします。
ハイムリッツHeimritzの小屋(バーグハウス)を左に、カンダー川を南に渡ります。
ここが本日の折り返し地点。地図ではカンデルファーンという大氷河がこの谷奥に見えるはずですが、小高くなっているシャフグリンデShafgrindeの奥のようです。帰ってから調べましたが、1850年まではここハイムリッツに氷河の舌がありました。ここ170年間で氷河が後退。標高差で約700M後退。シャフグリンデの小高い丘までいけば大氷河がみれるのですが、残念。あそこまで往復4時間くらいはかかりそうです。
渓谷奥の滝をズームアップして撮ってみました。落差はかなりありそうです。
帰路は川の南側の緩やかな道で下りセルデへ戻ります。カンデルファーンは見れなかったですが、ここまで素晴らしい渓谷トレイルを楽しむことが出来ました。
左の山側の中腹に小屋が2つ見えます。グフェラルプGfelalpの山小屋のようです。あの山小屋まで登れば、カンデルファーンの谷、バルムホルン、ドルデンホルンの高峰とガステルンタールの渓谷見下ろせるでしょう。
セルデ近くからのションビュールSchoenbuelの谷。右奥の高峰の先はバルムホルン、左はホッケンホルンからの尾根に挟まれています。ションビュールの奥へ進むとレェチェンパス(山小屋もあり)。ヴァリスとの州境、峠を越えればレェチェンタールに下れます。ここから前述のグフェラルプの小屋が小さく認識できます。北側の樹林帯の間を滝が流れています。
見所が多く、一日ではとても巡りきれません。セルデのバーグハウスに1泊すれば、初日にレェチェンパス往復、2日目はカンデルファーン氷河とクルーゼの渓谷まで下るのがいいでしょう。
ズームアップすると、白煙のしぶきを上げて迫力アップ。
セルデには13時40分頃戻りました。
Sがホテルヴァルドハウスバス停、Gがセルデのシュタインボックバス停です。
地図アプリ、カシミール3Dでは表示できませんので、ヤマレコでログを表示した地図をスクリーンショットして貼り付けました。ちょっとおかしな地図で、地下トンネルを走る鉄道路線も表示してあります。左側がSBB直行線で、右がBLSローカル線です。それにしてもアルプスのど真ん中、真下にトンネルをつくるなんてさすが、山岳鉄道を誇るスイスです。
復路のマイクロバスは15:10発を予約してありましたが、1時間半も待ち時間があり。1時間前の14:10発に空席があったので乗車しました。
クルーゼの狭い谷(動画からスクリーンショット)を下り、14時半前にカンダーシュテークの街に戻りました。
いろんなエッセンスが詰まったガステルンタール。知られない秘境の渓谷、時間があれば、脚力があればもっともっと楽しめます。
今回感じたこと。日本の山歩きは、ピークハンティング(山頂を極める)が主体であるのに対して、ヨーロッパアルプスの山歩きは峠・湖や山小屋へのトレッキング、小屋で食事したり、休憩をとって自然・風景にふれるといった多様性を感じます。国土、地形やインフラの違いによりますが、どちらも自然と山にめぐまれ素晴らしいと思います。
まだ時間があるので街を散策。翌日出かけるエッシネンゼー(エッシネン湖・・・V字谷の奥に在ります)への道です。湖をとり囲む高峰群、中央の山はブリュームリーザルプホルン3,663M。スイスで最も美しいとも云われる世界遺産の湖、どんな風景が待っているのか楽しみです。