”真名井北陵” は一般の登山地図には掲載されていない。 いわゆるバリエーションルートと云われる。
登山道はなく北稜尾根自体が登山道。 大丹波川から登る川苔山への尾根道である。 真名井沢の北側にあるため北稜と呼ばれるが、南稜という尾根はない。 南稜にあたるのは川苔山への登山道のひとつである赤杭尾根と思われます。
JR川井駅を過ぎて大丹波に入る道を上日向に向かう。 上日向バス停を過ぎると大丹波川にかかる「真名井橋」を渡ります。
何年か前、上日向バス停で下車。 ほとんどの方は棒ノ折山へ、私は大丹波川源流へ向かう。 群れの先頭を切って颯爽とただ一人真名井橋を渡る御仁がいました。 いったいどこへ? 後日わかりました。
橋を渡ると真名井林道ですがその路肩に丁度1台分のスペースがあり駐車できました。
支度を整え、9時寸前に出発。
真名井橋から真名井沢に沿った林道を4分ほど歩くと、右手に送電線巡視路の入口がありました。黄色い標柱が立っていて、「新秩父線No.38に至る」と書かれています。
この送電線巡視路は、きつい登りで始まりました。林道がみるみる下に下がって行きます。ゆっくりと20分ほど登ったところで、主尾根の上に立ちました。
ところどころ東京電力の黄色い標柱が立っています。以後、川苔山頂までほぼ西に向かって、尾根の上を忠実にたどって行くことになります。 送電線に沿って登っていく巡視路はよく整備されていました。
最初の送電鉄塔40号。
41号鉄塔が見えます。 そこまでは送電線に沿って通ります。
巡視路の部分は道迷いするようなところもありません。
42号鉄塔から5分ほどで、南斜面が大規模に伐採されている所に来ました。明るく広々として、とても気持ちのよい場所です。 行く手は「真名井沢ノ頭」? 南に赤杭山、東に高水三山をよく望めます。
送電線が登山道ルートから離れて、だんだん踏み跡がわからなくなりますのでルートファインディング。
でも、このバリエーションルートのいいところはヤブ漕ぎのないところです。
ヤブ漕ぎが好きな方は、チョット物足りないかも・・・・(笑)
尾根は広くなったり狭くなったりします。 道はなくなり尾根自体が登山道、一部枝尾根もあるが地図どおり西に向かって進めばいいのである。
尾根のコブのようなところがあります。 尾根が広くなり急坂。「新蔵指ノ丸」と呼ばれる地点のようです。
踏跡も途中で急斜面になり不鮮明。 あとはカン。 枝を見つけてホールドしながら左手にトラバース、尾根の左端からなんとなく詰められそう。
尾根らしい細い尾根に脱出。
ちょっとした広場のような窪地に至ると、行く手の枝越しに大きな峰が見えました。
1168m峰(雁掛ノ峰)の手前では、尾根の中心ではなく、斜面の踏み跡を辿るようになります。踏み跡は崩れてほとんどステップや足掛りはありませんので、足を滑らせないように注意しながら登って行きます。ところどころ立ち木の助けを借りないと登れないような箇所もあります。 枯れた木も結構多くあるのでよく見て握って確かめます。
1168m峰から、尾根の向きが南西方向になります。 尾根が広くなり天候が悪く見透しが良くない場合は迷うとこともあるかもしれませんが、尾根のセンターを外さなけば辿れます。
それから労せずして「真名井沢の頭」に達し、赤杭尾根と合流。 緊張感から解き放たれます。 (笑)
この張り詰めた感覚と未知のルートへのチャレンジは一般の登山道では味わえない。
予定時刻より早い。 時間がかかったらここから赤杭尾根で下るつもりでしたが、そのまま前進。
ブナ山(舟井戸山)への登り、登山道です。
曲ヶ谷北峰へでると展望が広がります。 長沢背稜、雲取山までの縦走路が一望。
川苔山もすぐ目の前。
12時15分、川苔山山頂。 前回登った時は大丹波川源流コースでしたが、今回の真名井北陵ルートのコースタイムは約3時間15分。 源流コースより若干早いかもしれません。
富士山は雲の中。 もっと早ければくっきりと見えたでしょう。
奥多摩西部、中央が雲取山。
平日ですが、お天気がよく山頂には多くの登山者。
下山します。 鳩ノ巣や奥多摩へ下山される方がほとんどのようです。
帰路は赤杭尾根を下ります。
ブナ山あたりには花が多く咲いてました。
尾根の途中にある桃の木平へでます。
元々のプランは、途中からバリ尾根で真名井林道へ下り車を停めた真名井橋へ出ること。 国土地理院の電子地図をみて赤久奈山から林道に最接近する支尾根を下り、傾斜のゆるいポイントから林道へ出るつもりだった。
山行前にヤマレコ記事をチェックしたら、たまたま私の計画した支尾根と全く同じ、林道にでるポイントも同じトラックがありました。 その方の記事には、「急斜面で下りられるポイントはない。」 「仕方なくロープで垂直懸垂で下りた。 最初から林道を下るべきであった。」と苦難の回顧もあり。 下りのバリは難しい!
熟考した末、長い林道歩きは望まないが仕方なく林道を下ることにした。
登りの真名井北陵を左手に見ながら林道を下ります。 41ー42号鉄塔が見えます。
大きく迂回して真名井沢へトラバースしていくんでずいぶん大回りで時間がかかりますが、眺めは悪くなく静かな林道で不快感はありません。
北陵との間には真名井沢が深く切れ込んでいます。
途中、キノコ採りをしている地元の方に出会う。 「収穫はどうですか?」→「あんまりよくない。」、「登りはどこ?」と聞かれたので、「向こう側の北稜です」と。
「クマとは出会わなかった?」 「昨年キノコ採りに入ったが、クマの親子が歩いていた。あの北陵は人があまり入らないんでクマが行き来しているので要注意。」 とのこと。 真名井橋林道入口に貼ってあった警告はダテではなかったようだ。
林道を下る。 それにしても長い、谷に深く切れ込んで眺めは悪くない。
この真名井林道は山側に擁壁が多く、簡単に下れるところはほどんどない。
プランした支尾根から林道へエスケープ出来そうなポイントを探しながら下ったが、擁壁が続き下れそうなポイントは少ない。 壁の端からかろうじてロープを使えば下れるところ、記事の方は多分そこから冷や汗もので下りたと察します。 もう数百メートル先にトラバースすればロープなしでも下れそうな地点(上の写真のところ)はありましたが、楽な傾斜ではありません。
こうして林道を歩いてみて初めて確認できます。 林道へピンポイントで下りるのは至難です。 地図だけでは判断できない難しさを感じます。 多分、この地点をGPSでマーカーしておけば何とかなるでしょうが・・・
私も赤久名山から②で下ろうと思いましたが、前述したとおり結局①の林道を下りましたが正解でした。 ②で下るのは意外に難しい、最後に林道の擁壁に阻まれてしまう。 容易に下れるとことはほとんどない。 Aが2枚上の写真のポイント。 もう一つBに階段がありました。これもまた上からみたら見つけるのは至難なピンポイント。 GPSでピンを貼っておかなければ無理でしょう。
むしろ、③ 赤杭尾根を809Mピークまで下り尾根を真名井橋まで下る。 真名井橋横へ延びる枝尾根は緩やかではありませんが阻む崖や擁壁はありません。 確実なのは730Mピーク下の鉄塔から青木神社への尾根に沿った巡視路?を下ればリスクは低くなりそう。 GoogleEarthで見てみましたが行けそうです。
バリ好きな方、下ってみて戴けませんか?(笑) 但し自己責任でお願いいたします!
久しぶりのバリルート、ヤブ漕ぎもなく適度なテンション、静かな歩きと展望を楽しめました。
真名井北陵、晩秋か冬にアイゼンを付けて登ってみてもいいかもしれません。
クマが冬眠に入ったあとに・・・