**********
山というのは登ってみなければわからない。 そんなことを実感させられたのが今回の経ヶ岳である。
中央アルプスの北端にあり、標高2,296Mで日本二百名山のひとつ。木曽駒ヶ岳から安平路山まで続く中央アルプスの主峰から少し離れて南にある独立峰が恵那山、北にあるのが経ヶ岳。北は八ヶ岳、北アルプス、西は乗鞍と御嶽、東は南アルプスに囲まれた申し分のないロケーションであるのだが・・人気のない山のようである。どんな山なんだろう。
山頂までは往復約9時間のロングコースであるにもかかわらず、避難小屋はない。危険なところはなさそうだが、日帰りしなくてはならない山である。
登山口は伊那市羽広にある仲仙寺にありこのコースがもっとも一般的であるが、他にショートカットはないかと探す。南箕輪村のWebsiteには大泉所ダムからのルートが記載、上りのコースタイムはなんと3時間30分!これなら楽勝と思ったが、「山と渓谷」のタイムは4時間40分と1時間10分も長い。昭文社地図は更に長く5時間。 常識的に見れば、地元のホームパージの方が信頼性があるように思える・・・ ともかく伊那市・仲仙寺ルートより南箕輪村の大泉所ダムのルートが早そうで、大泉所ダムから登ることにした。
伊那インターで下り、大泉林道(舗装路)を進む。
登山口駐車場へな5分ほどで着きます。5~6台ほど停められる駐車スペースあり。既に所沢ナンバーの車が1台駐車。
この日は全国的に真夏日で久しぶり。登山口では雲もあるが青空もみえてまあまあといったお天気。この週は北アルプスか上越の山に行こうと思っていましたが、降水確率が高いしにわか雨も雲も多そう。たまたま検索した経ヶ岳は山頂は晴れという予報で即決定。
ひと月ほど前に気象協会 tenki.jpの”登山天気”というアプリを入れてみた。毎月240円の課金があるが最初の1ヵ月は無料。検索の対象の山は日本三百名山、近辺の山も参考に出来る。山頂、登山口、麓と3つのスポットでの予報が見れる。麓の天気は10日間、登山口と山頂は5~6日先までの予報となっています。登山口が雲でも山頂が晴れならば、雲海越しの展望が楽しめることもある。お気に入りの山は10まで登録でき、すぐ見られます。さてその信頼度は?
駐車場のすぐ手前が林道の支線、ここが登山口への入口です。8時過ぎに出発、GPSの記録では標高1,025M 8:07となっている。
雑草の生い茂った林道を進む。
林道の終点からほどなく2合目の道標。 沢にかかった木道をわたると本格的登山道、尾根に向かって急登がはじまる。 ヤブ蚊やブヨが舞っている、ハッカを付けたのでなんとか凌げるが要注意。
3合目の道標。 ジグザグの急登が続く。 この日は東京や名古屋では真夏日、びっしりとした樹林帯に被われ風もない。 サウナ状態の登山道である。 最後に登ったのは前月21日、もう1ヵ月以上のインターバルで体がすっかりリバウンドしてしまった。 体が重いし、脚がスムースに前にでない。 4合目までのコースタイムが55分だが、今日の私は何分かかるのだろう。
尾根へのトラバースに入ると、視界が開け伊那の山麓と南アルプスが見える。天気は上々のようだ。
仲仙寺からの登山道に合流。時間は9:12、登山口入口から65分。コースタイムを10分オーバー、やはりペースは遅い。ここで補水し早くも休憩10分。
合目ごとに、表示板が付けられている。南箕輪村によって設置されたものだが、ご親切に次の合目までの所要時間が記されています。 5合目までは30分の表記。
唐松林の単調な道、尾根の左側に沿って続きますが沿道には花が多く見られます。 黄色いキオンやオレンジのフシグロセンノウといった花が多く咲いています。 ホトトギスやオダマキも。
5合目、10:03、花の写真を撮りながらですが、なんと45分近くかかりました。
次の6合目までは25分の表示。 この日のスローペースでは遅れる一方です。
このコースは迷うようなところもなく、歩きやすいが・・
尾根沿いでも、樹林帯が続きまったく風がない、暑い! 見透しもないうっそうとして暗く気分的にも滅入る。湿度は80%以上でしょう。
切断された木株には苔がいっぱい、キノコもいっぱい。 残っているのはほとんど食べられない種類でしょう。でもところどころにキノコハンター?のマーキングがある。どこかには食用があるはず、間違いなくキノコの山です。
6合目、10:33通過。 一向にペースは上がらず。
「7合目まで20分」 あ~、この標識 親切すぎます。(笑)
ど・お・し・て・こんな山に来てしまったん だ ろ う ・・・
後悔の念が浮かぶ。 山は楽しく登るものだ。 ち が う だ ろ う~と心で叫ぶ。
7合目 11:01到着。 遅れが累積されていきます。(笑) コースタイムと競争するつもりはないが、その日のコンディションが測れます。 でも、ここのコースタイムちょっとタイト、まったく余裕をみないペースのように感じます。・・・なぜ・・後述
7合目の樹間からは伊那谷の山麓、南アルプスが見えるが雲が多くなっている。 天気予報では昼にかけて山頂は晴れるという前日の”登山天気”の予報だったんですが・・・
8合目までは40分と長距離区間。
途中でガスってきたと思ったら、雨が降り出しました。 まさか!
登山天気予報もアテにならず!
急いで雨具を着て、ザックカバーをつける。
もう昼までには山頂へつけない、撤退しようかとおもいましたが・・・
アザミ、ヤナギラン、キリンソウ、ウツボグサ等花々が多く見られます。
もう少しいってみよう。
「蔵鹿の頭」と呼ばれる8合目には12:09到着。 お昼ごろには山頂に着けると皮算用していたのですが、この区間タイム40分にたいして65分以上かかりました。(昭文社地図は50分)
8合目はベストな展望スポットのはずですが、視界はほとんどありません。 もうここで引き返そうか、12時を過ぎている。 ここまで出会った登山者は4名だが、すべて下りで多分私がこの日の最後の登山者だ。 時間から見ると6時には出発しているだろうがいずれの方も健脚でしょう。
9合目までは20分? 山頂までは20分?(昭文社地図は1:20)
もう少しだ、多分この山に再びチャレンジすることはないだろう。
下山時間をシュミレーションしてみました。 標識と地図のコースタイムの中間をとって1時間で山頂まで頑張ってみよう。
ところが、この先の道は花々と笹薮に被われいます。 足元を確認しながら進みます。
カラマツからダケカンバの樹林帯に入ります。登ったところが9合目と思ったら、黒沢山からのルートとの合流点でした。 ふたたび下ってまた9合目に登り返します。
9合目 12:33通過。ほぼ予定どおり。「奥の院跡」標高2,252M、ここからまた下ります。
このように熊笹に被われてバリ同然。スパッツを着けてますが、下半身は笹露で濡れます。レイン用ズボンを8合目で穿くべきでしたが・・・
小さなピークが見えて登り返し、ようやく山頂かと思いましたがニセピーク。 再び下って登り返し。
樹林に被われたなだらかな頂がガスのあいだに現れました。
13:06 ようやく山頂です。 経ヶ岳、標高2,298M。 登山口を出発してから丁度5時間です。 石仏にまずお参り、平安時代に比叡山延暦寺のお経が山に納められたということより経ヶ岳と名付けられたようです。 山頂は全方位樹林に囲まれて展望なし。
もう、この山は今回が最後、再び登ることはない。奇妙な安堵感が湧いてきました。
20分程休憩、昼食用に携行したにぎり飯ものどに通らず。 お茶とお菓子(ドラ焼きと昆布)だけで済ましました。 下山には約3時間半とみたら、17時までには登山口につける。 4時間としても17時半、日没前だ。
13:26 ふたたび山頂の石仏にお参り。 登れたことへの感謝と無事下山できるよう祈願して下山しました。
9合目から8合目への下り、 ヤナギランやキリンソウのお花畑。 オトギリソウ、ヤマハハコ・・・・
雨も上がりましたが、すっきりした青空ではなく曇天交じり。
再び8合目。 木の陰でみえませんが、背後の山は露岩の頭?か大泉山?
標高は既に2,150M以上、コース上で一番の展望地であるこの「蔵鹿の頭」を山頂とした方がいいとおもうんですが。。 ” 望 郷 ”と刻まれた石碑がある。
樹間にみえるのが、経ヶ岳山頂のようです。
いろんな花がこんなに多く咲いてるとは予想外、期待外でした。!(^^)!
7合目から振り返ると、8合目、露岩の頭、右端は大泉山?
伊那谷をはさんだ南アルプスは雲に覆われスッキリせず。
ここから再び樹林帯が続き見透しがない登山道を下る。 上りでは眺望もない不快なロングコースをなぜ登らなければならないのか、何回も脳裏をよぎった。 幾度か途中撤退する気になった。下りは負荷もなく、体が慣れてきたのかほぼコースタイムのペースで下る。
登山口には16:38到着、山頂から約3時間十数分。出発からの合計時間は8時間半。
南箕輪村が表示しているコースタイムは、キツイと思います。 隣町伊那市から登る一般コースに比べて1時間半も早いとはすごいアピールか、或いは誇大広告か? (笑) 私の邪推かもしれませんが、4合目より山頂は南箕輪村の飛び地=テリトリー。標識を含めた登山道の整備は同村による。隣の伊那市仲仙寺から登るよりも、大泉所ダムから登った方が早くて楽そうとの印象を受けます。伊那市のホームページでは仲仙寺から山頂までは4時間、これまた競うようにキツいタイムと思います。多分実質的なタイム差は10~15分程度と推定、そんな大きな時間差はないと思います。たぶん、山渓のタイムが標準的なコースタイム(上り4時間40分)と思います。
*下山後麓から撮影、一番右端のピークが経ヶ岳のようです。
以前「百名山山歩回想記」で述べましたが「いい山」とは下山して登山口に着いたとき、登ってよかったという気持ちが湧いてくる、ほのぼのとした気持ちで帰宅できる山。 キツイ、タフな山で疲れきって下山しても、幾日か幾年とたったら「また登ってみたい」と思う山が名山である。
経ヶ岳には敬意を払いますが、残念ながら下山したあとそのような気持ちは湧いてこなかった。年月を経てもこの印象はかわらないでしょう、高妻山とおんなじでワーストの部類。でもこれは私だけの感じ方かもしれないということを書き加えておきます。他の方が違った状況で登れば、素晴らしい山と感じるかもしれません。
下山して近くの”みはらしの湯”へ。 ガスってはいましたが露天風呂からは南アルプスがみえました。 露天風呂の鳥瞰図には・・ 鋸岳から「東駒ヶ岳」、仙丈岳、荒川岳・・ 湯に浸かって南アルプスの夕景を眺めるのは至福の時、散々なバテバテ登山のあとだからなおさらです。(笑)
伊那では甲斐駒ケ岳を”東駒ヶ岳”と呼ぶようですね。 ・・・なるほど。
★ 花の多さは期待外、次回に掲載する予定です。