秘かに いつか 平ヶ岳を登ってみたいと志していらっしゃる方、ぜひじっくり読んでください。(^-^)v
少しは参考になるかもしれません。
平ヶ岳、あまり知られてない山だが、 知る人ぞ知る玄人好みの山。
百名山中、日帰り登山としては最も過酷なロングコース。
今年10番目の百名山は、奥利根源流の秘境の山
単に山歩きという気軽さとは縁遠い 平ヶ岳だ。
ウルトラCコースもあるが・・・
ここは堂々と鷹ノ巣から正攻法でチャレンジ!
もちろん登山口から山頂まで10時間以上かかる黒部五郎岳、水晶岳、鷲羽岳や、日本一の標高差と長さを誇る甲斐駒の黒戸尾根があるが、 いずれも途中に小屋がある。
ところがこの平ヶ岳は、避難小屋もなく原則キャンプ禁止(一部を除いて)なのである。
トイレすらなく、携帯トイレ持参が必要。
とにかく一日で登り切って下山するか、途中で折り返して麓に戻る(撤退)しかない。
(或いは最悪ビバークを覚悟するか#59123;)
→ 日帰りしか選択肢がない山。
一部では最悪の百名山ともささやかれている平ヶ岳なのである。
いつものように行き当たりばったりで 簡単に登れる山ではない。
初心に戻ってこの山に臨もう。
まず 己(=非力)を知り 相手(=手強い)を知ることである。
平ヶ岳は2,190Mで、夏は暑い。 上越の山は夏場は暑いと聞いていたので、大半が残雪の残る5月~6月に登った。 昨年7月に登った高妻山は暑さとムシで苦労した。
一般的には休憩を含め12時間はかかると見ておかなければならない山。
気温も下がる秋シーズンは涼しく登りやすくなるが、日照時間が短くなりリスクがある高まる。
早く登れるパワー登山者、具体的には確実に往復10時間を切って登れる方(標準コースタイムの7~8割の時間で山歩きできる)以外には難関の山。
こう考えてみると、登山時期は極めて限られる。 日照時間が長い時期、暑くならない時期。
遅くとも気温が上がる7月中旬前、できれば樹海ラインが開通する6月中旬直後がベスト?かも。
とにかく早出することである。 この時期は4時にはすでに薄明るくなっている。
標準コースタイムは登り6:30、下り4:50 合計11:20
地図と高度グラフを眺めてみた。
下台倉山までのヤセ尾根は急登。
白沢清水まではアップダウン。
池ノ岳への尾根も急。
最後に緩やかに下って登り返すと平ヶ岳山頂。
水場は台倉清水、白沢清水も水量が?
あてになるのは姫ノ池下の水場、今頃はまだ雪渓の下?(大朝日岳の悪夢が甦る)
以上を勘案し、非力山ノボラーの攻略の基本は:
1) 前日に鷹ノ巣駐車場に入る(20台程度しか停められない)
2) 携行品は絞り込む。 22Lザックにレインウエア上下+ザックカバー、軽量フリース、4本簡易アイゼン、ヘッドライト、ヒートシート、必要な小物とファーストAID、ストック2本、GPS、カメラはコンデジのみ。
3) 食料はサンドイッチ、取り混ぜたお菓子と行動食。
4) 水はペットボトル。 スポーツドリンク3本、お茶1本、水1本+アミノバイタルゼリー。 ペットボトルで合計2.5L。 不足する場合は姫ノ池下雪渓で取水。 念のためフィルター持参。
もっと軽量化したいが、小物もあり。 これが限度か?
5) 基本日程は4時出発、 頂上着11時。 11時半下山開始、16時20分登山口到着と時間設定。
6) 下山のデッドラインを12時とする。 これを超えたら途中でも下山する。
7) 最初の急登である下台倉山までのヤセ尾根はゆっくりと登る。
急登で時間をかけ、それ以外で時間をかせぐ。
8) 場合によっては、姫ノ池にザックをデポする。
9) 見どころのひとつである玉子石はカットする。 欲はかかない。
10) 下りは急がない。 とくに痩せ尾根は注意。
この正規ルート、寄策・ウルトラCはないが、思いつくこと、気がついたことを着実に実行するしかない。
さて、その皮算用は如何になったか?
平ヶ岳周辺(東西南北)の天気予報を調べてみた。
当日の魚沼方面天気は概ね晴れ、午後遅くは小雨だが大荒れになることはなさそうだ。
尾瀬方面は曇り。 猛暑日で山麓の気温も30℃を超すとの予報。
今年は梅雨が早く明けるので暑くなり、先延ばししても同じだろう。
ある程度の暑さは覚悟だ。
予定通り、決行することとした。
関越道・小出ICでおり奥只見シルバーラインで銀山平へ。 この道は昨夏越後駒ヶ岳で通った。
ほとんどトンネルで、まさに日本の秘境へむかうという気にさせてくれる。
遅くとも23時には着きたかったが、銀山平から鷹ノ巣まで1時間近くもかかってしまった。
結局着いたのは24 時前。 駐車場には5~6台あった。
*翌朝出発時の駐車場
とにかくすぐ寝る。(念のため前日の午後少し仮眠しておいた。)
携帯の目覚ましで3:40に起きたが、支度と入念な荷物の再チェックで登山口を4:25に出発。
出発予定時刻より25分遅れです。 いつになく気がひきしまる思いである。
こんな気分は雲取山の最初の日帰りチャレンジ以来である。
(駐車場には10台ほどに増えてました。 この時間帯に出発する方が多いようです。)
沢を渡る木橋を横切るとすぐヤセ尾根へ。 GPSのスイッチを入れ忘れていたので、ここでONする。 (ルートログは、マニュアルで追加修正しました。)
早朝ですが、登りだすと 蒸し暑い。
私よりやや年配の方、 ゆっく~りとしたスローペースで登っていきます。 ペースが合わないので、お先に行かせてもらいました。(ところが、、、)
下台倉山までの尾根が延々と続いて見えます。
写真では撮りきれませんが、 実際に目にすると果てしなく長い万里の頂上のように見えます。
ヤセ尾根に登ると南に双耳峰の燧ケ岳も見えます。
途中で下りてくる方がいました。 テント泊でもないようですが・・・?(テン泊は原則として禁止)
いきなりの急登#59000;#59000;#59000;、 平が岳山頂まではこの尾根の3倍の行程もあると思うと。。。。。
ヤセ尾根で強い横風が結構吹いています。
歩くにはチョット嫌な感じもしますが、 急登でヒートアップした体がこの風でクールダウンします。
ヤセ尾根は細く見えますが、切れている場所は数か所で 気をつけて登れば大丈夫。
但し、山麓の午後の天気は下り坂なので、雨になったらかなり厄介な下りになる。
遅くならないうちに下ることだと言い聞かせる。
下台倉山には6:30到着。 ここまでは順調。
ここから南へ進路を変え台倉山に向かう。
樹林のなかを幾度か#59000;#59030;#59000;#59030;#59000;アップダウン。
まだ往路は気力充実で乗り切れるが、 疲れがでる帰路は堪えそうだ。
樹間からは雪斑をまとった越後の山、 中岳と越後駒ヶ岳(右端)か?
越後駒も往復標準コースタイム11時間(←大サバです)で、昨夏8時間以内で歩き切れた。
でも ここ平ヶ岳のコースタイムはそんなおつりがでる程甘くはない。
さらに台倉山の手前の稜線からは池ノ岳と平ヶ岳(左側の山)がみえる。
はるかかなただ。 果てしなく遠~い。
あんなところまで一日で往復できるのかという期待と不安が交錯。
台倉山へは7:30。 標識もなく、測量点のみ。
西に登山道は方向を変え下っていくと、 台倉清水。
水場は北にあるがそのまま進む、地図には渇水期注意と書いてある。
ここから長い樹林帯の中、残雪もあるが風もなく暑い。
前日の雨でぬかるんでいる、木道も滑りやすい。
8:15 白沢清水に着く。 水場はほとんど流れがなく淀んでいる。
前日の雨にも関わらずこの淀みでは、水場としては失格。 誰かが手を洗ったら、1時間以上淀んだままだろう。 ここは使えないと思った方が賢明です。
樹林帯を抜けると池ノ岳への尾根と前山が見えます。
まだまだ遠い、平ヶ岳はあの奥にあるのかと思うと・・・・
意外にもこの尾根には風もなく、どんよりとした薄日で暑さが籠っている。
ここはキツイ#59000;#59124;#59000;#59124;。 ペースダウンします。
ヤセ尾根で先に行かせて戴いた方が後に付いたので、先に行ってもらいます。
「飛ばしてると思った。 また先で一緒になるけど・・とりあえずお先に」 と。
小刻みに休みを入れながら、ロープ・クサリ場もある岩稜部を登っていきます。
小さな偽ピークも2カ所あり、 長~く感ずる池ノ岳への尾根。
背後をふり返ると奥只見湖、 そして会津、尾瀬、上州の山並み。
左手奥に平ヶ岳らしき山が見えてきますがまだ先だ。
先行者も視界から消えて、尾根には私ひとり。
なんでこんなキツい山登りをしなければならないのか?
そんな思いが脳裏をよぎるのは、久し振り。
でも もう少しだ、頑張ろう。 誰のためでもない、自分のために頑張ろう。 (笑)
そして・・・
ようやく、視界が開けると天上の台地、池ノ岳。 9:50
(到着予定時刻を10:00としていた。 かなりバテたにしては遅れなし。 チョット意外。)
木製のデッキでザックをおろし休憩。 へばったのか食欲もない。
でも天上の楽園です。 姫ノ池、湿原越しに越後の山、 湿原台地越しには雪渓をまとった平ヶ岳がゴ-ル。
ここから平ヶ岳頂上までは下って登り返して40分のコースタイム。
恥を忍んで、 ここにザックをデポすることにした。 (笑)
万が一の雨に備え、レインカバーをつけて棒に固定しておく。 (2枚目上の写真のとおり。)
レインウエア(上)とペットボトル1本、ウエストポーチにカメラ・GPSと行動食+お菓子を入れて出かけます。
湿原の中の木道を進み、平ヶ岳へ。
コースタイムは40分ですが・・・
これなら、昔の山男さんや峰の松風さん並みの歩きです。(笑)
誰もいない静かな天空の歩き。 爽快感が漂います。
20分ほどで平ヶ岳山頂へ到着。 【10:25】 #59120;
設定した予定到着時間は10:50。 予定より25分早い。
三角点は木道の右手の樹林の中。 三角点と2,139Mの標識。
南東に面した木製の憩場からは尾瀬・上州の山々のパノラマ。
更に木道を進むと行き止まりとなり、小さなアンテナがあります。
地図ではここが平ヶ岳山頂最高点2,141Mのようです。 行きそびれないで下さい。
百名山にはこんなところがいくつかあります。 (笑)
大きな池(地糖)があり、新潟側の視界が開けています。
池越しに、八海山、中ノ岳、魚沼駒ヶ岳 が見えます。
この山頂はドコモ#59016;なら通じます。 やはり百名山はドコモが圧勝です。 (他社の方は不通のようでした。)
「無事登った」ということと、 「帰路は圏外となるので連絡できない。 天候によっては遅くなることもあるが心配しない様に」 と家人に電話#59016;。
さらに登り切ったという思いと 登頂が嬉しくて(笑) この瞬間の頂上の写真を山仲間にメール#59087;。
この日の入山者は多分20人ほどでしょう。 山頂には4人。
今の時間帯が登頂のピークで、ひとりふたりと入れ替わりに登ってきますが
この山頂には 多くの百名山で感じる喧騒感とは無縁です。
そして この自然の風景と静けさがいつまでも保たれて欲しいと願わざるをえません。
時間もあるので、花に目を配る余裕も出てきました。
(次回アップします。)
頂上での名残は尽きないが、40分も過ごすことが出来ました。
予定通り11時過ぎに下山開始。
途中水場の雪渓から戻ってくる方と出会ったが、「雪渓の水は流れているので飲めた。」
「玉子石へは雪渓で道がよく分からないので止めた。」 とのこと。
(水の補給は不要でしたが、不安があればここで必ず水の補填をお奨めします。)
天気の悪化も予想されるので、予定通り玉子石にはいかない。
姫ノ池へ戻り、身支度を整えて池ノ岳尾根を下る。 11:35
とにかく無事に下山するまでは登頂とは云えない。
白沢清水 12:20通過。
台倉山13:05。 ここまで頂上から2時間と順調。
池ノ岳の登りで抜かれた方に追い付く。 ここで休憩しながら話を交わす。
「今回が3度目です、やっと登れました。 79座目?の百名山です。」
「最初は雪のある時期で、途中撤退。 2度目は暑い時期で痩せ尾根の登りで引き返した。」
山登りのベテランが なぜ、あのヤセ尾根をスローペースで登っておられるのか この時察しました。
いきなり急登が続く下台倉山までは健脚登山者でなければ、コースタイムより早く登ってはいけないのだ。
スローと思って登ったがオーバーペースだったことに気づきました。
ここから、その方と一緒に下山、 楽しいお話を聞かせていただきました。
途中で休憩を何度もとり、最後は下台倉沢の清流でスッキリ。
鷹ノ巣登山口には16時過ぎ。 予定より少し早く到着。
それでも約5時間はかかっています。
* 4本簡易アイゼンを持参しましたが使わず。 玉子石へは必要かも?
私は百名山パラノイア?ではありませんが、山歩きの対象としての百名山はいい山が多いと思います。
途中でへばった時はもう平ヶ岳は2度と来ないだろうと思いました。
下山して幾日か経ちましたが、また登ってもいい山と思えます。 (笑)
平ヶ岳はアクセスもよくなく、アプローチも長いので 先送りしてしまいがちな山です。
体力があるうちに登っておく山でしょう。
そして、是非正規ルート(鷹ノ巣登山口~平ヶ岳)でチャレンジしてください。
中ノ岐林道経由ショートカットでなく。。
平ヶ岳踏破は私の山歩きのなかでも、印象深い通過点になりそうです。
”素晴らしい山歩き” となりました。次回 ”平ヶ岳 後記(あとがき)” に続きます。
追: 一年経ってようやく書きました。 → あれから一年(平ヶ岳後記)
よろしかったら覗いてみてください。