40年以上前の学生時代、先輩に連れられて中央西線の夜行で上松駅で下車。
中央アルプスの最高峰 木曽駒ヶ岳を目指した。
飯田線・駒ヶ根駅で乗車し松本へ、そこで同好会
(山ではありません。)のメンバーと合流し青木湖での合宿に向かった。
ところが、なぜか上松から駒ヶ根までの肝心の記憶が欠落している。
15年ほど前の同好会OB会で、連れて行っていただいた神戸の先輩は大震災の頃に他界されたことがわかった。
悲しいかな、その当時の山行を聞くすべもない。
また、写真も撮っていなかった? か、若い頃の写真はすべて実家にあったはずであったが、実家の建替え時に紛失してしまった?
(どこかに埋もれているかも。 お願い! 出てこい!)せめて写真があれば、 記憶の一部は甦るであろう。
上松駅で下りて、駒ヶ根駅で乗ったのは確かである。 木曽駒は通過しているはずだ。 (笑)
その記憶を辿りに 木曽駒ヶ岳2,956Mに再登?してみたいと思った。
もう上松から駒ヶ根へ横断する体力はない。#59124;
駒ヶ根からロープウェイで千畳敷から登る。 一気に標高を稼ぐ。
当時すでに駒ヶ岳ロープウェイは開通していたが、乗らなかった。
30年ほど前には、家内とロープウェイで千畳敷散策にきたことがあります。 それ以来です。幸い好天気#58942;に恵まれた。 ロープウェイを降りると 千畳敷カール。 稜線の岩峰部以外は一面雪渓。
空のブルーもディープ、サングラス#59034;がないと目をやられます。 UVクリームで肌をプロテクト。
夏道はカールをジグザグに登っていくらしいが、 残雪期は乗越の稜線まで一気に直登である。
カールの積雪#58945;は3メーター以上、 ここはアイゼン そしてヘルメットを装着。 ピッケルは必須。
(アイゼンは10本爪以上推奨。 私の8本は前の2本が出っ歯気味のタイプなんで つま先は程よく食い込みます。 雪の無い岩稜部での10・12本での歩きは苦手です。)ようやく準備万端。 早出した人はもう雪渓の中腹に取り付いています。
BCのゲレンデがあるため、最初は山荘の右に下ってカールをまわり込む。
岩稜部に挟まれた部分から急登になる。
八丁坂から乗越までの傾斜は中途半端でない。#59122;
硬い雪でないので、つま先だけで登ると危い。 靴の前部をしっかり爪で刻んでピッケルを使って登る。
一歩一歩慎重に急がず、 とにかく後ろをふり返らないことです。 (笑)
稜線の手前はかなりの傾斜です。 先を行く登山者、 四つん這い気味。
稜線直下では夏道の一部にエスケープできますが、アイゼンでの岩道は歩きにくそうなんで そのまま登り切りました。
乗越浄土の稜線からは見下ろせば千畳敷, 水平線は南アルプス。
宝剣山荘の横を通り中岳へ向かう。
中岳に到着。 岩峰の頂です。
木曽駒ヶ岳のなだらかな山頂が見えた。
そして木曽御嶽山。
伊那前岳の稜線越しの南アルプス、 仙丈岳と北岳。
中岳の北斜面は岩がむき出しでアイゼンでは歩きにくい。
下りきると最後の上り返し。 山頂が目前。
木曽駒ヶ岳山頂2,956M。 千畳敷駅より山頂まで1:45。
あたりを見渡した。 記憶の落し物はないか・・・・・と。
登った時期もコースもまったく違うせいか、まったく昔の記憶が甦ってこない。
あたり一面残雪で同じ場所でも、まったく異なる印象かもしれない。
「記憶というのは、その出来事に感情がどれだけ移入され、付加したか? という程度・度合いと、その出来事が復習されたものか? 例えば 折々、日記や写真を見ること、当時の人と会うこと。 その頻度が高いほど記憶は長い期間に亘って保存されるそうです。」 ・・・・・ なるほど。
ということは、当時の山行がなぜか印象に残らなかった。 感動がなかった? のか。
天気がよくなかった?こと。 水満タンのポリタンクが入ったキスリングのザックが重く 頻繁に休憩をとりながら登ったこと。 テント泊でラジウスで炊いたハンゴウ飯、 駒ヶ根へ向かう林道からの伊那谷。
ほんの一部、 しかもどうでもいい部分。 断片的にしか残っていない。
途中のコース、山頂、展望といったほとんどが記憶から欠落。 こんなことってあるのか! #59123;
ひょっとしてアルツハイマーの前兆か? (笑)
ところが、アルツハイマーは最近の記憶から欠落していきそれが過去の記憶に及んでいくようなので、アルツハイマーではないようだ。 むしろ、昔のことを良く覚えていて、最近の出来事を忘れるのは要注意のようです。木曽駒だけでなく、当時登った鈴鹿や他の山々のことも記憶がフェードアウトしています。
ということは、その頃自分のなかでは山登りが重要でなかったのか、 キツさが先行し楽しめず、無意識に記憶から消し去りたかったか?
そして、社会に入り仕事に没入し? 外の世界に目が向いていった。
山登りを封印してしまったことが記憶から消失させたのだろう。
人間とは良くも悪くも 忘れる動物なのか? #59123;
いまやデジカメやビデオでイベントや思い出をどんどん撮っておけるし、ブログに残しておけば見るたびに甦り、記憶の劣化度は低くなるハズ。 技術の進歩は思い出さえも鮮明に残す時代になったのだ。
でも、それが幸せであるかは わからない。
記憶は甦ってこなかった 忘却の山。
でも、
千畳敷からの雪渓の登り、乗越浄土からの歩き、山頂からの360度の眺めは素晴らしい。
来てみてよかった。
登頂記念のショット、 そして駒ヶ岳神社に参拝。 これでよし!
山頂の北側からは 北アルプス。 穂高連峰、 槍の穂先も見えた。!
東は南アルプスが一望。 塩見岳への稜線には富士の頭。
塩見岳、 荒川三山(悪沢岳)、 赤石岳。 目は自然に自分の歩いた稜線を辿っている。
南は宝剣岳から空木岳、 南駒ヶ岳へ続く稜線。
遠くは霞んでいるが、全方位雲なし。 残雪の山の頂や稜線は青空に映える。
祠の南側は風もさえぎられポカポカ、 気がついたら1時間以上いた。
下りは中岳の(アイゼンでは歩きにくい)岩稜ルートは避けて東にまいて乗越浄土へ。
宝剣山荘からの宝剣岳。 雪庇の稜線は厳しそう、 やめておきます。(笑)
千畳敷を眺めると、 急斜面。 下りのほうがコワイ。#59122;
アイゼンをしっかり利かせながら、ピッケルでホールドして下る。
コツをつかみ慣れれば、不安感はない。
千畳敷に着いたら、 タイミングよくロープウェイ、 そして菅の台(駐車場)へのバスに接続できた。
駒の湯に浸かって帰ろうかとも思ったが、土曜午後の渋滞に嵌るのを避けて高速に向かう。
麓からもう一度、眺めてみた。
40数年前の山行は忘却のまま、あらたなメモリーに上書きされた。夕方5時半に帰宅できた。 そして一杯#58994;。
文字通り この日の木曽駒ヶ岳登山、溜飲が下がる思いであった。
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