* * * * * * * * * * 9月20日
小屋の朝は早いですね。4時半起床、5時朝食。それでも普段はありえない夜8時には布団に入るんで、ゆっくり休めますね。同部屋の皆さんにはイビッキーもいず、久しぶりに眠れました。6時過ぎに双六小屋を出発。双六分岐までは10分ほど急登を登り切ればあとは普通の登りが続きます。
1時間ほどで双六岳山頂へ。山頂に居合わせた方々、小屋で同部屋の皆さんも合流し談笑。
御覧の如くうっすらと靄んですっきりした青空ではありませんが、北アルプスの山は視認できます。視界に入る名山を眺めますが、やはり自分が登った山と登りたい山に視線がいってしまいます。
弓折岳~抜戸岳への稜線の先には笠ヶ岳。あの山はもう登らなくてもいいが、抜戸分岐まであの天空の稜線トレッキングコースはいつか歩いてみたいです。
水晶岳の先には名前の如く山肌が赤っぽい赤牛岳。どこからアプローチしても遠い北アルプスのほぼど真ん中、最深部の山です。未踏の山のなかで一番登りたい山ですが遠~い。早く登らないと夢のコースになってしまう。
まわりの山々の眺めも素晴らしいが・・この山頂から一番の絵になる構図は
双六から下るたおやかなる広~い尾根を前景にして、谷を挟んだ西鎌尾根稜線の先に聳える威風堂々とした槍ヶ岳です。このコントラストは絶妙としか云いようがない、絶景なんでしょう。
今まで双六分岐は幾度か通りましたが、水晶岳や黒部五郎岳といった百名山へまっしぐら、登ったあとも余力はなく双六岳はカットし分岐へ直行。双六岳の近くを通りながら忘れ去られた山となっていました。
登ってよかった! 心象に残る風景を刻んで双六岳を下山します。
双六小屋から弓折分岐への途中、槍ヶ岳西鎌尾根が際立って印象的です。遮るものがない弓折乗越までの稜線上を歩くコースはわずか1時間ほど、名残惜しい風景が続きます。
槍ヶ岳を眺めながら弓折乗越から鏡平への急坂を下ります。
帰路の鏡池、前日の往路と違って雲はかかっていませんがどんよりした空模様。やはり予報通り天気は下り坂です。でも弓折乗越からくだると暑さを感じます。
小池新道を延々と下り、登山道入口で林道に出ます。ここからは緩やかな下りの平坦路ですが、不快な砂利と中途半端な舗装路の林道は私にとってはワースト。ふつうなら登山口に下り踏破した充実感を感じて登山は終了しますが、毎回ここからの駐車場までの長い林道歩き(約1時間20分ほど)は山道と違って苦痛に変わります。
『昔はわさび平までシャトルバスが運行していた』とシシウドヶ原で会った方より聞きました。シャトルバスがあれば往復約3時間近くはカット出来ます。「バスがあるといいですね」と問い返したら、『バスがあるとアクセスがよくなり鏡平山荘までハイカーが押し寄せ登山愛好家の居場所がなくなる』なるほどそうなるのか。でも「そうなったら登山愛好家はもっと奥の双六や三俣小屋へ行くのがいいでしょうね」と応えたら苦笑されていました。
山は登山愛好家だけのもの、利便性をブロックして山に入らせないのは排他的であるような気もします。花畑を荒らすから「秘密の花園」にしておこう。ハイカーが入ると山を汚す、騒々しいと云われることに頷けないこともありません。排他性が山を守る。以前の私もそんな考えに傾きましたが最近は異なる視点でみるようになりました。山の大衆化とマナー・モラルの問題は基本的に異なるからです。
背後の槍ヶ岳もいいですが、手前の氷山はおいしかったです。(鏡平山荘にて)