7月12日 新たに出来た新路線 アイガーエクスプレスに乗ってきました。
この日はスッキリしない天気予報でした。 朝はゆっくりと過ごし、11時過ぎの電車でグリンデルワルトに向かいました。グリンデルワルト行の電車は1st. cl でも混んでます。
グリンデルワルト・ターミナル駅(グリンデルワルト駅のひとつ手前)で下車し、ロープウエイ・ターミナルへ移動。切符売り場でB・Oパスを提示したら、直接ゲートで係員にB・Oパスを提示するよう云われ、アイガー・エクスプレスゲートへ向かいました。(片道普通運賃は@32スイスフランと高い!ですが、B・Oパスなら支払いは不要です。スイス個人旅行は各種スイスパスがお奨め。)ここはメンリッヒェンへのゴンドラ駅でもありVバーンとも云われるグリンデルワルトの交通拠点です。
多連式なので次々と大型ゴンドラが入ってきます。2020年12月にオープン、44のゴンドラを運航し毎時2千人以上の輸送力があると云われています。
搭乗したゴンドラには乗客は7~8名程度でした。週末や朝の早い時間帯は混んでいると思いますが、定員26名で座って乗車出来るはずです。
上昇するゴンドラから見えるのは、緑の草原に点々とする家々、ヒュッテ、牛舎はアルプスの風景です。
アイガー・エクスプレス、モダンで窓が大きく開放的です。今回は動画でアップしようとジンバルカメラで撮ってみましたが、曲面ガラスなのか映り込みがひどくNG。一部動画をスクリーンショットしたカットは使用しています。
グリンデルワルトからほぼ一直線にアイガー北壁の麓を上がっていく、アルプスの空中回廊。
思ったより天気はよさそう、メンヒやユングフラウの裾野も見えてきました。
間もなくアイガーグレッチャー駅に到着です。
全長約6.5KM、標高差は約1,400M を乗り換えなしで一気に、グリンデルワルトからほぼ一直線で運んでくれるなんて想像にも及びませんでした。ユングフラウヨッホまでトンネルを掘って登山電車をつくったスイスにとっては、なんら難しいことではなかったのでしょう。
ここまでわずか約15分余、鉄道ならばクライネシャイデックでの乗継を含むと50分くらいですので大幅に時間は短縮出来ます。駅の標高は2,320Mです。
駅舎から出ると、アイガーとメンヒがそそり立つ。遠景も素晴らしいが、至近の眺めは圧巻。
右の氷河がアイガーグレッチャーです。最後の訪れたのは2010年の7月上旬ほぼ同じ時期ですが、氷河の先端部分はアイガーグレッチャー駅近くまで残っていました。大きく後退しています。
天気も良さそうなので、アイガーグレッチャー駅近くを散策することにしました。
花々がいっぱい咲いていました。
氷河の水で潤う花畑
クライネシャイデックから上ってくる電車。今眺めるとちょっとクラッシックで昔のまま。
座るにはちょうどいい大きな岩があったので、そこで本日のランチ。お花畑とアイガー氷河を見ながらのピクニックランチ、KIOSKで買ったパンでも氷河と花畑を見ながら食べるとおいしいです。(笑)
アルプスのキバシガラス、多く飛んでいます。食べ物を狙っています、要注意。(笑)
ワスレナグサが多く咲いていました。
アイガーグレッチャー駅の外観、2020年オープンしただけあってモダンな造りです。でも、昔ながらの石造りの壁でできた旧駅舎とレストランの建物がノスタルジック。
散策を終えて駅へもどります。
駅舎の窓からのアイガー氷河(Eiger Gletscher)、舌の先から滝となって流れおちています。
氷河をズームアップ。氷河の圧力でしょうか、破砕されて尖った塊群が迫力あり。
下りのアイガーエクスプレスの乗車口がちょっと分かりにくいですが、鉄道のホームに上がって←方向に進む回廊の先に改札があります。反対側はユングフラウヨッホに向かうプラットホームです。
下りのアイガーエクスプレスに乗ります。二人で貸切状態。
クライネシャイデックの駅、以前なら途中下車してアイガー・メンヒ・ユングフラウを眺めながら食事をとったり、休息したりするポイントでしたが・・・夏シーズンなのに閑散とした感じ。アイガーエクスプレスで人の流れが大きく変わってしまったかもしれませんね。
広い空間、座り心地のよいシート、足元までカーブしたパノラマウインドウで視界は抜群、どこも特等席。
眼下にはグリンデルワルト~クライネシャイデックを結ぶ登山電車。車窓から流れる風景を楽しみながら下るのもいいですが、もう幾度も乗車してますので今回は復路もアイガーエクスプレスにしました。
初めてユングフラウヨッホへ行かれる方は、上りでアイガーエクスプレスで、下りはクライネシャイデックでランチブレークし登山電車でグリンデルワルトかラウターブルンネンへ下るのがお奨めのような気がします。
ケーブルはザイル3本で支持されているので、運行速度が速く安定感あり。ケーブルを支持する鉄塔を乗り越える際の揺れも少なく感じます。さらにケーブルの車輪回転のエネルギーを電気に変換し、シートや窓にヒーターが備わっているとのこと。快適な乗り心地です。
新しく出来たグリンデルワルトターミナル。モダンな建物で、お土産屋さん、COOP、カフェや変な中華麺屋(中国系)もあり。スイスのいろんなチョコレートや物産品があります。比較的セレクトされた土産が目立ち、お土産を買うにはいい場所と思いました。
ここなら日本人観光客は多いと思ったんですが、日本の方と思われるのは数人(日本人は直ぐわかります)。東洋系の方はほとんど韓国人と中国人、香港や台湾からの方も一部いらっしゃるでしょう。もともとスイスは物価が高い上に航空運賃の高騰、さらに円安という強烈パンチ。新聞の海外旅行ツアー広告を見てもスイスは突出して高い料金です。さらに日本のスイスツアーは何十年経っても変わらないグリンデルワルト~ツェルマット~サンモリッツといった定番なので、「一度行けば十分」ということになります。海外旅行欲が旺盛だったかつての壮年世代もシニアとなり、身近な国内旅行へシフトしている現象も大きいと云われています。ある意味では今の日本の閉塞的な現状が映し出されているような気がします。
ターミナルから鉄道駅への回廊に写真が2枚掲示されていました。ほとんどの方は急ぎ早に駅へ向かうなか、思わず目にとまりました。
「アルプス最長の氷河、1850年からのEvolution」、ふつうはEvolutionとは「進化」という肯定的な意味ですが・・・こんな場所で使い方が間違っているとは思えないし、或いは「皮肉」な言い回しなのか?・・・ 多分、後者「後退・衰退」だろうと察しました。
右側には”1850年のアレッチ氷河”。ユンググフラウ、メンヒを源流とするヨーロッパアルプス最大の氷河。氷河の広い幅と深さ、膨大なボリュームは当時のスケールの大きさをうかがわせます。
もう一枚、左側には”今日のアレッチ氷河”の写真が掲示されていました。
”今日のアレッチ氷河” 1850年の様相とは一変。比べてみると氷河は大部分が消失。谷の両サイドに氷河の移動で削られてモレーンの谷となっています。それだけ後退してしまったということです。(サイズは同じ大きさにトリミングしてあります。)
1850年の写真を見ると、今日の氷河流域に比べると幅で約2倍以上、高さは300ほど上部あったように見えます。氷河の舌(末端部)は無残にも大きく後退・消失しています。4年前アレッチ氷河の下流部沿いのトレイル(右側)を歩きましたが、1850年当時は氷河の下で存在していなかったのです。150年以上にわたって氷河の高さが数百メートル消失してしまったということです。今世紀末までにアルプスの氷河が消失すると云われています。